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2.2.5 乗り物酔いに影響を及ぼす因子について
乗り物酔いに影響を及ぼすと考えられる因子の数は非常に多いことは容易に想像できる。本研究においては、乗り物酔いのメカニズムの解明のために、非常に広範な観点から乗り物酔いの発症に関わる因子について計測、解析、評価を行ってきた。本研究の最終目的はこれらの影響因子の抽出と、各因子の動揺刺激との因果関係、因子間の相関関係等を量的に明らかにすることである。ここでは、本研究で研究対象としてとりあげた諸項目を中心に乗り物酔いに影響を及ぼす因子について述べる。
表2.2.3−9に示される血液検査結果から得られる各成分と乗り物酔い発症との相関関係に更に被験者の日常の健康度をも加えたものを表2.2.3−10に示す。
被験者数が少ないため確定的なことは述べられないが、
?日常の健康度に関しては、酔いの発症には性格行動尺度およびストレス度の相関が多に比べて高いことがわかる。即ち、タイプAの性格を持つ人ほど、また日頃からストレス状態に陥りやすい人ほど酔いやすいことを表している。
?血液検査結果から見た生理学的影響因子に関しては2.2.3−3)において詳しく述べられている。総合的に見ると、全ての血液成分が何らかの形で乗り物酔いの発症に関与するが、特に、急激な肝機能の低下に関係のある因子の影響が大きいことがわかった。
?心理的影響に関しては、2.2.3−3)に詳しく述べられているとおり、血中のカテコールアミンのうちアドレナリン、ノルアドレナリンが酔いの発症に大きく関与していることが判明した。これらの神経伝達物質は、怒り、恐怖、不安等の情動に強く関係するホルモンであるから、酔い発症過程の心理的変化との関連を詳しく調べる必要がある。
?本研究においては、一定の環境下における動揺暴露実験によって、酔い発症過程の生理的変化、心理的変化の計測、解析、評価を目的としているため、環境条件を多様に変化させた実験は行っていない。しかし、酔いの発症には視覚刺激、嗅覚刺激を初めとして、温熱環境、騒音、振動、光・明るさ、等の周辺環境も極めて大きな酔い発症の影響因子であることを忘れてはならない。

 

 

 

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